残像
連れて行きたい店がある
そう誘われた場所は
入口がどこにあるかわからない隠れ家のよう
テーブルにもカウンターにも、お金のかかりそうな綺麗な女性を連れた殿方が並んでいる
役不足を少しは補ってくれるかもしれない真紅のソールのピンヒールを履いてきて良かった
「お久しぶりですね」
マネージャーが彼に挨拶をする
私はちらりと彼を見て、笑いをこらえる
こんなお店、まず家族とは来ないよね
ましてや男性同士なんてあるはずないよね
慌てて何か言い訳していたけれどバレバレですよ
ふふ
かつての誰かの残像が残っている場所に違う女を連れて行くのは、その誰かに失礼じゃなくて?
ピピビピッ
微笑みながら反則の笛を小さく吹いた
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ふたりで偶然見つけた、美味しくて雰囲気の良いこぢんまりとしたお店。近くに行くことがあっても、あのお店にだけは私以外の誰とも一緒に行かないでねって、約束をさせた。
とっても贅沢なワイン、ごちそうさまでした。